第8期【若狭ソーシャルビジネスカレッジ2025 第6回】

「地域のこれから「地域課題解決のための企画・提案」

◇日時:1月12日(日)

◇講師:田辺一彦 

◇参加者人数:12名

◇内容: 地域を愛し、その資源を「生業(なりわい)」へと昇華させるためには、時には外の世界に目を向け、成功者の視点を取り入れる「視点の越境」が必要です。今回の研修では、その新たな試みとして、福井市内から北陸最大級のアウトドアショップを牽引する経営者を講師にお迎えし、オンラインでの対話を実施しました。

本来であれば、地元・若狭町内で活躍する先達に直接お話を伺いたいところではありましたが、あえてこのタイミングで「広域の視点」と「ビジネスの最前線」に触れることを選択しました。その狙いは、私たちが守り育てている「自然」を、いかにして持続可能な「商売」へと繋げ、地域の経済循環を生み出していくかという、よりシビアで本質的なヒントを得ることにあります。

今回お招きした経営者は、根っからの「自然好き」という情熱を原動力にしながらも、現代のビジネスにおいて欠かすことのできない「ネット通販(EC)」の分野で圧倒的な実績を築き上げられた方です。その緻密な戦略と実行力は国内でも高く評価され、数々の権威ある賞を受賞されています。「好きなことを仕事にする」という理想を、デジタルという武器を用いて、国内トップレベルの「強固なビジネスモデル」へと昇華させたそのプロセスには、私たちが地域観光やアクティビティを推進する上で学ぶべき点が数多く存在します。

講義の中では、単なるショップ運営のノウハウに留まらず、「自然×商売」というテーマを深く掘り下げていただきました。

  • 「付き合い方」: 資源としての自然を消費するのではなく、いかに共生し、守りながら活用するか。
  • 「位置関係」: 供給者と消費者の間に、どのような価値(ストーリー)を介在させるべきか。
  • 「あるべき姿」: これからの時代、自然を生業とする者が持つべき倫理観と、デジタル技術をいかにして「地域の体温」として活用するか。

こうした多角的な問いに対し、実体験に基づいた重みのある言葉をいただきました。 今回のウェブミーティングを通じて得られた知見は、若狭の自然を単なる「景色」として捉えるのではなく、世界に通用する「価値」へと磨き上げるための大きな指針となりました。外からの視点を得ることで、逆に「若狭にしかない独自の強み」がより鮮明に浮かび上がる。そんな、地域を深く知るための新しい一歩となったと感じています。

   

    

アウトドアショップ経営者との対話は、単なる成功談に留まらず、自然を相手に商いを行うことの厳しさと、それを乗り越えるための本質的な姿勢を浮き彫りにする時間となりました。

1. 参加者の視点:情熱がもたらす「復元力」

参加者の感想の中で最も多く見られたのは、「根底にある自然への愛着」がビジネスの継続性に直結しているという点への気付きです。

  • 困難を凌駕する「楽しさ」の追求: 「自然の中に身を置くことが好き」という純粋な感情があるからこそ、経営上の困難に直面しても、常に「次の一手」を前向きに描き続けられる。その積み重ねが結果として成功に繋がっている姿に、多くの参加者が感銘を受けました。
  • 市場の激変と業界の特殊性: コロナ禍において、多くのアウトドア関連事業が一時的な特需に沸いた一方、収束とともに急激な変化に晒されたという現実は、参加者に強い衝撃を与えました。特に、一般的な観光業や飲食業とは繁閑のサイクルが異なるため、公的な支援が届きにくいという「業界独自の孤独な闘い」があったことを知り、地域で事業を継続していくことのリアリティを深く認識する機会となりました。

2. 主催者の総括:「好き」という才能と「掛け算」の論理

「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますが、今回の対話を通じて、その本質は「他者が耐えられない場面でも、本人にとっては耐えることが苦にならない(=辛抱がきく)」という、圧倒的な継続のエネルギーにあることを再確認しました。

  • 「没頭」が生み出す独自の価値: 自らが何かに深く没頭し、それを仕事へと昇華させるプロセスにおいて、他者には真似できない執着心と試行錯誤が生まれます。これが、競合に埋もれない「事業の確立」への決定的な要素となります。
  • 「何か × 何か」が創り出す新しい生業: 塩見直紀氏のワークショップでも学んだ「半農半X」や「自分AtoZ」の考え方と同様に、今回の事例もまた、「自然への情熱」と「デジタル(EC)の技術」という、異なる要素を掛け合わせることで、地域に縛られない強固な生業が生まれることを証明していました。

今回の学びは、参加者全員にとって、単に「自然が好き」という段階から、それをいかに社会的な価値や仕組み(システム)へと変換していくかという、次のステップへ踏み出すための大きな糧となったと確信しています。