Author Archives: 若狭ソーシャルビジネスカレッジ

第4回カレッジ:聞き書き

第4回カレッジ(10月5~6日)では、「聞き書き」に挑戦しました。

かつての地域の生活や遊び、仕事等のお話を伺い、昔の地域の姿を知ることで、これからの地域のあり方や、地域での生き方、そこでの自分のあり方のヒントを探るという目的で行いました。

地元で生まれ育った地域の大先輩であるお二人にそれぞれ2時間弱、たっぷりとかつての若狭での暮らしをお話していただきました。

  

お話を聞いた後は、書き起こし作業・編集です。

「聞き書き」では、話していただいた内容をそのまま、話し手の口調のままに書き起こし、その方が実際語っているように、その方の人となりが見えてくるように編集していきます。

とても大変な作業ですが、この作業を通して、聞き手は話し手とさらに向き合っているような体験ができます。

今回、話し手・聞き手も初対面同士でしたが、だからこそ話せる、聞けるお話もあったのではないでしょうか。

もう既に若狭に慣れ親しんでいるカレッジ参加者の方にとっても、今回ひとりの方にじっくりとお話を聞くことで、若狭についての新たな発見があったようです。

参加者の感想より:

「その人物の人生を知るということが、どれほどの意味・大切さを持つことになるのかを実感できた2日間になりました。一人一人の人生の歴史を聞くことは貴重であり、感慨深いものでした。」

「長い間農業をされてきた方の話を聞かせて頂いて、日頃当たり前に使っていた道具や仕事環境にあらためて感謝したいと感じた。」

「同じ人に二人で話を聞くと、興味を持つところが違ったり、まとめる時も視点が違っていて面白かった。」

第3回カレッジ:田舎で生き生きと暮らすための生業を考える

第3回カレッジを9月7~8日に開催しました。

今回は、「田舎で生き生きと暮らすための生業を考えるー海越地区を事例に」というテーマを設けました。

実際に自分が田舎で暮らそうと思ったときに、どんなことがあれば移住したいと思うのか、どんなことをしながら暮らしていきたいのかを、考えてみる機会としました。

いつかは田舎暮らしがしてみたい、地方と関わりながら都市で暮らしていきたい等、参加者の方によってそれぞれですが、今回はカレッジの活動拠点のある海山と、隣の塩坂越という比較的小さな空間(海越地区)に限って、その中で何ができそうか、やりたいのか、できるだけ具体的に考えることにしました。

1日目はフィールドワークで、海山、塩坂越集落には何があるかどんな風景見えるか、それぞれの視点で見て回りました。

そして2日目には参加者それぞれの関心に沿って、してみたいこと、あったら嬉しいことなどをまとめ、発表してもらいました。参加者の方の感想:

「最初、『海山の資源を活用したビジネスを考える』と聞いて、資源が見つかるか?無理じゃないか?と思っていた。それでも、1日目ゆっくり地域を歩いて回りながら、自分がここで何が出来たら嬉しいか、自分が住人だったらここがどうなると嬉しいか、、いろいろと考えることが出来ました。」

「このように発表や討論をできる場所・時間の大切さを痛感しています。具体的に考え、行動する力を養う必要性を再認識し、今から行動したいと思います。」

第2回カレッジ:自然を活用する働き方

7月最初の週末に開かれた第2回のカレッジは、「自然を活用する働き方」というテーマで行いました。

まずは実際に催行している自然体験ツアー(1日目は海でカヤックツアー、2日目は湖周辺のサイクリングツアー)を体験しました。

そして、思う存分体験を楽しんだ後、2日目の午後は、座学でツアーの料金設定や運営に必要な考え方などを学びました。

参加された方の感想:

「座学ではものの価値について考えさせられました。正直、自分はものに関してあまりこだわりがなく、安さを重視してしまうことが多く、ガイドの価値に関してもわからなかったのですが、この考え方は、”持続可能”には程遠いものだと感じました。もの、人の能力の価値について考えていきたいのと、できる範囲で良いと感じたものを安さより重視していきたいです。」

「これまで仕事で体験等の料金設定の難しさ、考え方に悩んでいたが、今回の座学を終えて、少しわかったように思う。ただ、現状の設定料金とのすり合わせや、都市部と地元での価格に対する価値観に大きな差があるので、単純に計算で決められないとも思った。」

普段はものや体験の価格、価値について深く考えることはなかなかありませんが、今回のカレッジを通して、それぞれの仕事や生活のなかで、新たな視点を持たれたようです。

今後、それぞれの方の進む道で、ひとつの考え方として参考にしていただければ幸いです。

第2期 開講しました

昨年2018年度からはじまった若狭ソーシャルビジネスカレッジは、3月の活動報告会で第1期を終えました。そして、第2期となる今年度は6月8日~9日に開講しました。

今回は、第1期から継続参加の方、地元の高校生、Iターンで町内に移住した方、また、  名古屋、神戸、岐阜などからさまざまなバックグラウンドを持つ方、8名が参加してくれました。

初めて顔を合わせる方同士、やや緊張感の漂う雰囲気のなか自己紹介とオリエンテーションを行いました。その後、昨年集落調査で訪れた場所など、町内各所を参加者のみなさんと巡りました。

2日目は特別講師として、昨年度もお世話になったNPO法人共存の森ネットワーク理事長の澁澤寿一さんにお越し頂き、これから目指すべき生き方や、集落調査の手法である「地元学」についてお話いただきました。

その後、「地元学」の実践として、若狭町向笠の集落にお邪魔し、地域でのくらし、かつての姿などを伺いました。

参加者の方の感想より:

・集落調査では集落の実情を知ることが出来て貴重な体験でした。大学の授業やネット等で見たり聞いたりしたことはありましたが、住んでいる方に聞くことで初めてわかることがあると痛感しました。

・こんなに身近に素敵な環境があったことを忘れてしまっていました。久しぶりに触れてみて、ほっとしたし素敵だなと思えたので、もっと大事にしようと思いました。

また、どの方も普段の生活ではなかなか出会わない方々との交流をとても楽しんでおられたようです。次回以降もますます楽しみです。

2月のカレッジ:ふりかえりとまとめ

今回は、これまでの活動のふりかえりとまとめの時間となりました。

約1年間、若狭の地元の方々と触れ合いながら、これまではほとんど所縁のなかった参加者の方も、地域の様々な魅力を発見、体感することができました。

来月3月の回は、その成果報告として若狭の皆さんに発表させて頂くことになり、今回はそのとりまとめの作業となりました。

それぞれが若狭で感じ・発見してきたことと、自分の興味関心分野をかけ合わせて何ができるか、何をしたいかを「わたしのソーシャルビジネス」として、意見を出し合い、それぞれが自分の方向性を固めていきました。

午後は、プレ発表会として、発表内容を共有する時間を設けました。それぞれにとても個性のあふれる「ソーシャルビジネス」で、発表会本番が楽しみになるとともに、このビジネスが実現したら…という期待も沸いてきました。

☆若狭ソーシャルビジネスカレッジ 成果発表会☆

入場無料、どなたでもご参加いただけます。

■日時:2019年3月23日(土)13:00~

■場所:若狭町中央公民館 講堂 (若狭町中央1-1)

12月のカレッジ:自分を見つめなおす

今回は、半農半X研究所の塩見直紀さんを講師としてお招きし、トーク&ワークショップをしていただきました。塩見さんは、これからの時代の生き方として「半農半X(エックス=天職)」というコンセプトを提唱されており、特に、地方で暮らしていこうとする人たちの背中を押してくれる存在となっています。

ワークのひとつ、「自分AtoZ」は、文字通りアルファベットのAからZまで、自分に関わるものや好きなもの・ことを当てはめていくものです。これをそれぞれが発表してみると、自分自身にとっては、普段忘れている自分の興味関心をあらためて掘り起こせること、また、聞く側にとっては、これまで知らなかったその人の意外な一面を次々知ることができ、とても新鮮で楽しい発見ができるワークでした。

 

この他にも地域の資源と、自分の得意なこと・好きなことを組み合わせて、新しい取り組みを考えてみるなど、様々なワークを体験することができました。

塩見さんはとても穏やかな語り口ですが、ワークショップでは絶妙な切り口で次々とお題を出され、参加者のみなさんはあらためて自分を見つめ、掘り下げ、再確認することができたようです。

6月からご一緒してきた参加者の皆さんの新たな一面を知ることができ、また、それぞれの個性がより輝いていた2日間となりました。

11月のカレッジ:先輩実践者から学ぶ

前回は、地域の70代の方々から昔のお話をうかがい、「聞き書き」を通して、かつての地域の姿、くらしについて学びました。
今回は、参加者の皆さんとも年代の近い40代のお二人にご協力いただきました。現役世代であるお二人に「取材」をし、その内容をそれぞれの参加者の方のフィルターを通してまとめてもらうことにしました。

協力者のお一人は、武笠雄志郎さんです。町内で木の家づくりにこだわる住宅会社を経営されています。実際に会社の敷地内にあるモデルハウスにお邪魔して、お話を伺いました。県産材にこだわった木のお家は、入った途端に木の香りに包まれ、あたたかく、とても居心地の良い空間でした。体感するだけでも十分良さを実感できるお家でしたが、武笠さんにお話を伺うと、家づくりに込める想い、その家に住む家族の幸せをも考える家づくりに聞き手の皆さんも感動するばかりでした。家づくりだけでなく、地域のことや、社会のことや様々なことにお話は広がり、充実した時間となりました。

  

 

もうお一方は、インターネットでの衣料品販売業を手がけていらっしゃる松村真一さんです。大学進学を期に県外へ出た松村さんは、世界を旅し、さまざまな職業を経験しながら地元に戻り、現在の形になったそうです。常にアンテナを張り、その時々の「これだ」というものを嗅ぎ分けて来られた松村さんから、まさに今後を考えている最中のカレッジの皆さんも多くの刺激をもらったようです。
また、年齢を重ね、父親となった松村さんは、地域活動にも積極的に関わるようになったそうです。集落の青壮年会にも入り、「地域の大人たちが楽しく暮らしている姿は子ども達にも伝わる。子ども達の将来の選択にも大きく影響するだろう」という想いで、仲間と共に考え、実行していく姿はとても頼もしく感じました。

10月のカレッジ:生き方から学ぶ「聞き書き」

今回は、NPO法人共存の森ネットワーク理事長澁澤寿一氏を特別講師としてお招きし、「聞き書き」に挑戦しました。澁澤さんは「聞き書き甲子園」という毎年100人の高校生が「森・海・川の名手・名人」を訪ねて、知恵や技、生き方、価値観を聞き書きし発信するという活動を、17年間続けておられます。

はじめに、澁澤さんより「聞き書き」の目的や心得について講義をいただきました。今回は、若狭に生まれ育ってきた方にその生き方をうかがうことによって、過去を知り、そして、これからの未来を考える際のヒントを探ろう、思考の幅を広げようという目的で、聞き書きに取り組みました。参加者は3組に分かれてお話を伺い、最初はお互い初対面で緊張もありましたが、話し手の方に子ども時代のお話やご家族のこと、お仕事のことなど大変興味深いお話をしていただくにつれ、どの組も予定していた時間を越えてもお話が尽きることがなかったようです。

2日目は聞き書きの編集作業です。まずは録音していた音声を書き起こし、さらに話し手の方の人柄や想いが伝わるように、編集作業を重ねていきます。初めて聞き書きに挑戦した参加者の方々は、話し手の方のお話や生き方そのものに向き合うこと、また、それを形にしていくという責任感等、これまでにないとても充実した体験となったようです。

聞き書きは、初対面だった話し手と聞き手が、人生を語ること、それに真剣に耳を傾けるという対話を通して、ほんの数時間のことでもそれぞれの距離感がぐっと近くなります。今回も年齢、性別、育ちの全く異なる人同士がつながり、貴重な経験となったようです。この温かなつながりがこれからも続いていけば、と願っています。

9月のカレッジ:若狭の自然を活かす仕事

前回までは、湖・海・里のくらしについて特に昔の話を中心に聞いてきましたが、今回は、現代~未来の「自然と関わる仕事」について考える回となりました。

まずは若狭で実際行われている自然を活かす仕事を体験するために、1日目はカヤックツアーのガイドを体験しました。この日は前日まで続いた雨の影響もあり、あいにくの曇天と気温も低めでしたが、通常のツアーコースをめぐり、ツアーガイドの一端を体験してもらいました。そして、夜の懇親会では、実際に若狭でガイドに携わっている若者2名も加わり、その仕事への向き合い方について刺激を受けた参加者もいたようです。

2日目は、朝からサイクリングツアーを体験しました。自動車では通らない細道を通り、違った角度から若狭の湖や町並みを見つめ直すことが出来ました。実際にサイクリングツアーでも使用されている電動アシスト付き自転車でしたが、3時間たっぷりのサイクリング終了後には、心地よい疲労感がありました。

午後からの座学では、代表の田辺より、実際に行っている自然を活用したアクティビティーツアーの運営方法について解説し、持続的な経営、自然を活かしながら生活をする働き方について、参加者の皆さんと深く議論することができました。

自然と関わる仕事、また、若狭のような田舎で自分らしく生きていくための仕事、働き方について、答えはひとつではありませんが、それぞれの皆さんが自分を見つめ直したり、また共有することができ、とても有意義な時間となったと思います。

7月のカレッジ:若狭を知る②「海編」「里編」

前回は湖のくらしをうかがったので、今回は海編、里編です。

1日目は若狭、常神半島に位置する神子集落です。ここで漁業と民宿を営んできた森下幸一さんに、半島の漁村のくらしを伺いました。昔の漁師村の連帯感と厳しいしきたりのお話は、厳しい自然条件、限られた土地の中で36戸の家族が生きていくために築かれたものだったのでしょう。

印象的だったのは、神子集落は昭和42年に道路が通るまで、よそへ行くには移動手段は船しかありませんでした。これまで半島の奥というと不便なイメージしかありませんでしたが、当時は船を持っていることで自由に移動でき、内陸に住む人が「漁師の人の方がハイカラだった」というように、漁師さんたちは隣町へ買物に、遊びに出かけていたそうです。

2日目は里編、三十三間山の山すその上野集落で、先祖代々農業を生業としてこられた石井達さんに、里のくらしについて教えていただきました。

上野集落の周辺は現在は水田が広がっていますが、かつては養蚕や葉タバコもしていたそうで、絹糸は海外へも輸出していたそうです。そして、台地の上にあり、集落内に川が流れていない上野では、かなり古く(江戸時代?)に近隣の川から用水路を引いたそうです。そして、現在ではその水量豊富な用水路を活用し、冬の融雪にも活用しています。この融雪設備がとてもシンプルな仕組みながら、絶妙な工夫がされてあるものでした。上野集落の水扱いにただただ感心させられました。

 

それぞれのお話をうかがい、同じ時代でも海と里のくらしは、全く違うように感じました。それは、今とは違ってそれぞれの集落の行き来が少なかったこともありますが、それぞれの暮らしがそこの自然と密につながっていたからでしょう。そして、どちらも自然や社会変化によって何度も大変な局面にあい、その度に、皆で知恵を出し合い、皆が手や体を動かしていた、という姿が見えてきました。そうしなければ生きていけなかった時代ではありますが、便利で不自由のない現代においても、そのような先輩方の姿勢は見習い、受け継いでいきたいもののひとつです。